むかしむかし・・・
なにか心が落ちつくゆったりした大きな河のほとりに
かや(茅)ねずみが住んでいました。
スパニーダ国で一番チビでした。
かや原に住まいしてます へい、カヤです
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朝目ざめるとざわめく茅に登って体操をするのです。
遠くを見渡したカヤは身震いしてひらめくのでした。
「ほりゃ?人の家に赤いものが揺らめいてる
あれなんやろ?」
「まるこいな、中に入ったらおもろいでぇ」
「どんな匂いやろ?」
カヤは尻尾をなびかせ
脚を最高に回転させて
たどり着きました。
「ハアハア、ぜーぜー」
しっぽを茎に絡ませるのは得意、
小さな両手でつかみ登ったら
なんとまあ景色のいいこと
周りは花園で
「この花居心地よろしいわ
この景色天国や!」と自慢がお。
蜜もしべも食うた
鼠声の高周波で呼びかけました。
「そんな茅(かや)ばっかし見とらんと、
こっちきたら色とりどり、蜜もおいしいでぇ
けしきもええでぇ」
仲間達は思いました。
「ふん、わたしら、何億年も前からここにおるんや」
「いつもでしゃばりやがって」
「あほ!ええかっこしいめ」
「変鼠ぃ!」
そのネズミはずっと茅の林に
ひっそりと暮らしていたのです。
カヤはそのとき、風に乗ってきた
匂いを感じました。
「にゃーお」
下に恐竜のような大きな毛むくじゃらが
のしのしやってくる
なんぞ ネズミの匂い!
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カヤは十字を切って神様に祈り懺悔しました。
「ドキドキ、心臓に悪いなぁ
心臓は神様の贈り物、大事にしなくてスンマセン」
「仲間を非難したことになってしもた、かんにん」
「どうかむこうに・・・」
毛むくじゃらの恐竜にくわえられて
家の主の足許にポトリと落とされました。
ギュー
仕合わせなことに、あるじは優しく手に乗せてくれました。
あったかいなぁ
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あるじはスパニーダ国の祭りに着飾って出かけがてら、
カヤを庭のはしにそっと放してくれたのです。
毛むくじゃら恐竜にくわえられた毛衣はほころび
とぼとぼ元の河ふちの住まいにたどりつきました
でもその夜は、住まいに蓄えた犬麦をたらふく食べたら
すやすや眠れたのです。
翌朝がちゃんとやってきました。
伸びをしたカヤは葉先のつゆを飲んだ後
遠くを見渡して、こりずにひらめくのでした。
「おはよ、あの花を河に浮かべて
大航海しょ!」
「ほりゃ?・・・近ごろきれいな水だから
彼岸にあるというシジミがうまいそうな。
採って皆にうろ」
「ひひひ もうかるでぇ」
向こうに見えるは
・・・・・・そうして赤い花船に乗ったまま行方がとだえたのです。
・・・時は劫を経て
カヤは転生してマルコとなりました。
今生は “おっちょこちょい” のありようを調える
精進の道をため息をつきながらも歩むのでした。
おしまい
えいや!