千 年 の み ち

“渡り鳥” が描く今と未来               たちばなマルコ

 毎日が誕生日  <温泉気分の人>


出張の列車の中で、あるおじさんと隣り合わせた。
耳が遠く、左目が見えず、右目も白内障で見づらいという。

元公務員で、色々な部署を体験し、これから
加賀温泉で湯治とカニを三匹食いに行くという。
公務員が給料が高いなどと批判されるのはお門違いだという。

このお人が口にすることは、愚痴に聞こえなかった。
戦時中の苦労も、病気のことも、仕事もなにやら愉快そうにしゃべる。

そうしているうちに、後ろからビニール袋の差し入れが来た。
オカキとおこし、チョコと飴が入っており奥さんの心づくしだ。

おじさんはもう温泉気分で、いつの間にか加賀温泉駅についた。
奥さんと妹さんの三人でその温泉駅に降りてゆく。

「主人のお相手してもうて・・ほんとたのしそうで、ありがとう」と
お三人は深々と頭を下げられたのだった。

「いぃえぇ~、遠足気分を楽しませてもろて。。」と
こちらも頭を下げたのだ。
     

    f:id:Mtatibana:20160223180102j:plain

           温泉気分湧き出づる白山