来る道、行く道 < 悲 >
生まれる前の古い歌を思い出したのです
♪ 意地も人情も 浮世にゃ勝てぬ ~ ♪
それは母を訪問した時のことです。
骨折して動けぬ体で、叶わぬ悲嘆と老苦に
もがいている母上でした。
職員が「ほとんど食事を召し上がらないのです」というので、
好きな豆腐や、わさび、果物類、お菓子などを持って行きました。
「いらない」と顔をしかめつつ、
息子のいうことを渋々きいてくれたのでしょう
湯豆腐だけはかなり食べてくれました。
後はしんどいといって横になってしまいました。
職員は「少しでも食べていただき」と礼を言ってくれました。
一瞬、イイコとしたと思ったのですが違っていました。
私がこの世を辞する時、『野垂れ死』が理想だと思い出したからです。
医師と相談して、木食(モクジキ)し自分の足で食べにゆくことが出来ぬときは
自然に老衰死するのがいい。それを覚悟準備せいといわれていました。
他にも色々、辞する方法を考えております。
そんな事を覚悟しているのに、
母への対処が何と独りよがりなことか・・・
列車の中で愕然としたのです。
“ 本当のよかれ ” ではないことに気づいたからです。
単に “ 苦しみを長引かせてはいまいか ” と
そして、列車の中で、母の心を思うと
♪ 泣いちゃならぬぅと 言いつつ泣いて
月に崩れる 影法師 ♪