千 年 の み ち

“渡り鳥” が描く今と未来               たちばなマルコ

 渡り鳥がゆく < 人生の岐路 :ベトナム Tay Ninh > 


礼拝の参観を済ませたら、ご活躍日の終わりのせいで
腹が無性に空いた。

寺院敷地の大門を出た、日本なら門前通りのような所で
レストランを探す。腹の虫はすぐにかぎつけた。

入って、固いプラ椅子に座り、クッションを膨らませて敷く。
「女将、旨いご飯たのんます(コム頼んます)」を一言。

にっこり女将はささと準備して出してくれた。
「どうぞ」
「あれ、日本語やん?」
「日本にいたことがあるんですよ」
    

      

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まずは腹ごしらえで、山盛り飯の上にあれこれ乗っかっている
定番、庶民ご飯とスープをみな平らげた。
一息つくと、氷入りのお茶が出てくる。

「Dung cho da.」つまり、氷ナシでねというと
普通のお茶に変わる。体は冷やさぬがモットー。

日本語が何と1/3も通じる女将の話。
大分前に産まれ故郷に帰っているという。
若くて美しかった頃、沖縄のある家に嫁いだそうだ。
ところが、文化の違いか美しさのせいか言葉の行き違いか分からぬが
夫の母親との折り合いが悪くて、戻ってきたとか。
妹二人は鹿児島と大阪に嫁いで元気だそうだ。

聞きはしなかったけれど、寒村の嫁候補として
豊かな日本の生活を夢見た末の途絶えた道。

「どっか泊まるところある」
「ここ数分先に、クエンというホテルがありますわ」

早速行くと、スマホで遊んでいる受付娘の訳の分からぬ英語に悩みつつ、
宿泊することに決めた。融通の利かない人で、価格交渉もできない。

しかし、早朝なら4分、昼なら10分で大聖堂へ通えるからね。

少し狸腹になってすやすや眠った。
女将の行く末を、カオダイで祈って上げよう。