来る道、行く道 < ⑧蝉の礼拝 :ベトナム Tay Ninh カオダイ調査 6/4記 >
昼寝後、意を決して聖堂寺院に向かう。
六時の礼拝に参加するためだ。
先に記したように、昼間の歩行は困難なほど暑く蒸し蒸しする
1分も経たぬ内、胸と背がびっしょりだ。
わたしの小さな携帯リュック内必需品類の水瓶を重くした。
大門の三か所ある扉が閉まっている。
待ち構えているバイクタクシーの真っ黒に日焼けしたおっちゃんが
ドアを押して入れと見本を示してくれた。バイクに乗れと言うために。
数日後は、門の前の水売りのおばちゃんが、ドアの開け方を教えてくれたが
これまた、コーラを売りつけるために
商売人の下心親切は大の苦手
入ったカオダイは驚くことに、バイクの行き来が全く途絶えている
広大な敷地に静けさと蝉の声、ふたつ。
右の森にはリスも住む、猿も15センチものヤスデも
松尾芭蕉流にいうと
閑かさや カオダイ祈り 蝉の声
なんと蝉が唱和している
丁度、日本のカナカナゼミの声を更に高くした
そう、キンキン・・・という音が大き鳴ったりし小さく細々鳴ったりする
最初、一匹かと思ったが大集団が合わせてフェードイン、フェードアウトする
向こうの森からは別の違う唱和が聞こえる。
なんだか、蝉が礼拝していると感じるほど荘厳である。
大聖堂での礼拝の終盤、ヨガの高僧のような案内風紀委員が
親切にあれこれともてなしてくれた。
「どこからかの」
「ジャパンどす」
「?」
「ジャ・パ・ン、日本、にっぽん、とうきょ、おおさかですねん」
「OH!Japan!」
温かな握手をしてくれた。
早速、フィが書いてくれた『カオダイの大司教様への願い出書』
をこのヨガ行者風紀委員に、恭しくみせた。
彼はうなずき、顔は「そうなのか」と言っていた。
とりあえずあす、朝6時においでとベットナム語でいった。
蝉の聖歌を背に聞きつつ家路をたどった。