■

　毎日が誕生日　＜　初恋の精算　：ﾍﾞﾄﾅﾑ Tay Ninh ＞　  

マルコには変な癖があって、
病気で苦しんでいるとき、昔や前世が蘇る。

少年時代高熱が出ると夢にでる光景は決まって
“それ！進めぇ！！！”と馬にまたがって
敵を攻めている光景だった。

　　　　　　　もののふは死を恐れず

反撃にあって尻尾を巻いて逃げたのか、
落城させたかの夢は見たことがない。それは良きこと･･

このタ・ニンでバイクにぶつかって初めて見た夢は
まことにおかしいのだ。
少年時代での、ある可愛いが刺激的な女の子の母親が出てきた。

どうして母親なのかは分からない。
このお方、マルコに輪をかけたヘンテコぶりだった。

髪を後ろにグルグルとぐろ巻きに結い、
衣装たるやニューファッション。
南洋の花柄が紺色の生地に映えるヒザから下のない
短い浴衣のようなもので身をくるんでいた。

そしてあり得ない親しみを込めて語りかけるのだった
「あーら？満瑠壺さん。こんな所でお会いするなんて！」

刺激的な少女とは、道で会うと「満瑠壺ちゃん！」と
抱きついたり、投げキスをする西洋帰りの少女である。

その母親は、「これからみんなで踊るからいらっしゃい！」
と手を振りながら向こうから来る御輿に駆けて行き、
てっぺんに飛び乗ったのである。ﾊﾞｯﾀみたいに


朝、痛い胸をかばいつつ、左に転げてゆっくり起き上がり
「あ、これで過去の縛りから解き放たれるんだな」と予感がした。

本来こんなつまらぬ事を笑い飛ばすこんな年で
過去に揺さぶられる幼稚なマルコなのだ

　　　　　

　　　　毎日がお祭り　御輿だ御輿だ！　浴衣ｺｽﾌﾟﾚ