チャップリンは社会をよく見ているなぁ。
ご存じ『殺人狂時代』だ。
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チャップリン扮するヴェルドーは1930年の大恐慌で職を失い、
車椅子の妻と少年の息子を養うため
金持ちの婦人をあの手この手で籠絡し消し去って金品を奪い暮らす。
充・実・した日々だった。
そんな主人公には--
庭でバラの花を摘むヴェルドーが足元にいた毛虫を拾い
「ほら、こんなとこにいたら踏みつけられるよ」と
よそに置いてやるのだった。
ある雨の晩、雨宿り中の刑務所を出所したばかりの女と出会う。
自宅に招き毒薬で殺人の実験台にしようとした。
しかし彼女の身の上話で「夫は戦争で負傷してたの。
私が生きている証なのよ。彼のためだったら、
人殺しだってするわ」との呟く姿にうたれ
食事代を渡して帰す。
やがて世界恐慌の荒波がヴェルドーにも押し寄せ、
賭けた株は暴落して全財産をなくし、妻子は死亡。
「私は愛するものを失った、
絶望というのは麻薬みたいなもの。
それは人生を捨てるっていうことだ。
まぁ、我々は遅かれ早かれそうなるんだが」
そんなうつろなとき、雨の夜に出会った女性と再会して
暖かくもてなされる。
彼女は成金の軍需会社の社長の妻になっていたのだ。
人生を捨てた彼は逮捕され、裁判にかけられた。
断頭台に送られる前の有名な言葉
「一人殺せば悪党で
100万人だと英雄です
数が殺人を神聖にする」
身近な回りの愛が発展し、殺人鬼になる人もいれば
我が国大事の戦争で大量殺人が起こりもする---そんな愛の物語
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「殺人狂時代」以降、チャップリンは
アメリカから国外追放命令を受けることになる。
大量殺人をした政治家や武器商人から疎まれたんやろねぇ
マルコには
愛するものを失った、彼の砂漠心に涙流れるなぁ
美しい絵を口で描く星野富弘はいった
「いのちが一番大切だと
思っていたころ
生きるのが苦しかった
いのちより大切なものが
あると知った日
生きているのが
嬉しかった」
チャップリンは逆説的にいう
「いのちより大切なものが
なくなったと知った日
生きているのが
空しかった」
映画は白黒世界だけど、古今変わってまへんなぁ
追放されたアメリカにたいしてポツリ
I am at peace with God.
My conflict is with Man. Chaplin