蟄虫坯戸
“ むしかくれて とをふさぐ ”
とよむらしい
早朝7時に家を出て鈴木大拙館にむかう。
雨も時おりしずしず降りてくる
大拙館の入り口では、皿がその滴を受けて音が立つ
ソローの『朝の声』という箴言をひき立てる。
ロビーに立ち入ると丸っこいレモンが一つ
迎えてくれた。
あんたもわたしも黄色くなりかけ
暗がりの小部屋過ぎるとき、ふと呼ぶ声がする
うごく心と、うごかないおおいいなるもの
十字路というブレンドコーヒーの香がして
入れたて歓迎してくれる
約四十分ほどしずかに座るひと時
虫もつられとをあけて来る
人がつくる音がおさまりなくなると
なんと豊かな ♪ がきこえるのか
尾長鳥が鳴きとび、大きなサギが羽音しずかに舞う
カラスの声も心地よい
木々はひっそり見守って、葉の語らいがきこえる
キンモクセイだろうか、便りが風に乗ってくる
そう、本多の森は豊かな生命が息づいている
深い呼吸をしていたら、
思いかくれて とをふさぐ