千 年 の み ち

“渡り鳥” が描く今と未来               たちばなマルコ

 誕生日は頭突き・手飛び・刃噛み

母上の誕生日祝いに出かけた。

 

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   ☆☆☆☆


今年は大雨で、手にした黄色と紫の花も、
好物のバナナやお菓子なども濡れている。


ほんとは所望の焼き穴子ご飯でも作ってと思ったが、
施設の抵抗をさけ、別の日にこっそりする。
一年前、ウナギご飯を部屋でさし上げると目を輝かせた。

 

さて、来たことを告げると職員が出てきて消毒を促された。
まえもって所長とケアマネには伝えていたが、
受付は面会を告げると不思議な顔をする。
連絡は不徹底が常。

 

お!母上が車椅子に乗せられてやってくる
のが向こうに見えた。
それをいいことに当然のように個室に上がり込んで
手持ちのお土産のプリンと美味しいバナナを
テーブルに乗せて母上に挨拶をする。

 

「息子のマルコですよ、誕生日のお祝いに来ました」
と耳元5mmのところで低い声で伝える。
懐かしい母上の匂いだと思っていると
頭が素早く回転して鼻にゴンと当たる、アイタタタ

 

後にいる職員は「あ、頭突きです」と解説する。

 

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         ぴかちゅう ずつきは得意

 

わずかに聞こえる耳元で「はげたマルコが参りましたよ」
と語りかける。
息子だとは全然わからんのか、払いのけ手パンチを食わされる。

 

職員「あ、手が飛んでくるんですよね」

 

手パンチが顔や目に当たらないよう そっと腕をまわして
耳元にもう一度ささやく。
「誕生日おめでとうございます」
 あれれあれれ、母上の歯が私の腕に刺さっている。
噛まれているのだ

 

職員「よく噛まれます」

 

歯は丈夫な母上の場合は刃物である。
私のも刃物である

 

「おすきな丸々太ったバナナ、黒スポットが出来てから
 めしあがってね」と説明していると


「この禿頭め!!」のとどめの一言

 

職員「 ・・・・ (:クククク )  」

 

しばらく挨拶をくりかえし語りかけていると、
厳しい表情が何かしら優しげにゆるんだような気がした

 

見送り不要ですというのに職員は出口まで
車椅子見送りをしてくれた。
禿げめ!といった母上の険しい顔もずっと優しそうになっていた。

 

いとまする背中にほんの少し微笑みを投げかけて
くれたように感じつつコロナの街に向かった

 

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        施設の向かいは葬式屋 
  お節介な世間は、母上を長生きさせて苦しめている
      本人のしたいことを封じ込めて

 

 

 

 

 

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          いらんこといった