千 年 の み ち

“渡り鳥” が描く今と未来               たちばなマルコ

南の島 便り < 外来 >

 

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         花は橘
      緑の葉かげに
       真白く薫る

 

宿舎の前に巾3mほどの川が流れている。
渓流は石垣で隔絶されていても、
川床にはちゃんと植物が生い茂る州がある。
保護されているうなぎがたくさん暮らしているし、鳥達も遊ぶ。

 

その河原でお洒落な長靴姿の若い人たちが何か探していた。
「兄さん、何をしとんの?」
「植物がはびこりすぎるので抜きに来てるんです」
と綺麗な標準語で素直に反応し、屈託ない笑顔がこちらに向けられる。

 

彼らは長靴のまま川から上がってきて、
マルコにその植物を見せてくれた。
元生物部の私にはごく普通の植物にしか見えない。
この島の中では一番の大都市から派遣された環境庁の者だと言う。

「外来植物がたくさんはびこりすぎて、生態系を乱すので
取り除きに来てるんです」とあれこれ説明してくれた。
清々しい若者たちで何時間も会話が持ちそうだ。

 

この南島では、ハブがやたらと多くて慣れた地元の人でも
暗い茂みには入り込まないという。
最初こわいなーと思っていたが、よくよく考えれば
この島を貴重な東洋のガラパゴスにしたのは、
たくさんのハブ蛇なのだろう。
開発が好きな人々が森に入って、荒らし回るの防いでいるのだ。
ちょっと強面のハブ君たちはこの島の守り神だ。

 

八朔の種を一握りほど持参してきた。

マルコの母上が大事に育てていた八朔は、
味は濃くて甘みと酸味がえもいわれぬ温かな黄色の実を
たくさん実らせた。せっせせっせと手入れをした
美味い実の中に潜んでいる一番大事な種を集めて、
どこか遠いところでみんなに分けてあげる。

 

この南島でもおすそ分け。
自衛隊の人にも犬の散歩のおばさんにもあげ、宿舎にもあげた。
他の道行く人にも。みんな嬉しそうに手のひらに包み込んでいた。

 

 

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この島では タンカンと言う硬い皮で覆われたぶきっちょなみかんある。
宿舎の女将さんが「マルコよかったらどうぞ、
近所の人がとれとれのたんかんをジュースにしてくれた」とおすそ分け。
おおきにおおきに、うまいなぁと頂いて、残りを製氷皿冷凍しておいた。

 まてよ・・・、持ってきた八朔の種、この島では外来種だな

 

本土では大都市を中心に変異コロナが大流行、
この南島でも町長自らがアナウンスでしょっちゅう注意を呼びかけている。
外から来る人に気をつけろとやんわりと言う。
宿舎の主人も本土の人達にはマスクをしてもらうように
注意を呼びかけてるよと言い淀む。

 

---そうか 、マルコも外来種
ガラパゴス南島のバランスを崩すかもしれへんなぁ

 

けれども長い目で見たら多くの人達は大陸からやってきた時、もともと外来種
在来種・外来種どんどんと変化していく。

 

             花はタチバナ
            天地の中で
            甘美にかおる