千 年 の み ち

“渡り鳥” が描く今と未来               たちばなマルコ

縄文の平和と滅亡調査-32 <英勇4-木蘭>

 

 

中国の歌や伝説の中で語り継がれる有名な女将軍である。
老病の父に戦さの招集がかかり、おてんば娘の木蘭(ムーラン)はこっそり男装して抜け出し、替わって従軍する。
北方の異民族を相手に各地を転戦し、勝利に導いて将軍となる物語。

 

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            ムーラン (木蘭) 廟 

    ∞

☆中国の民に伝わる木蘭辭☆                   Marco意訳

喞喞復喞喞  聞こえる嗚咽とすすり泣き
木蘭當戸織  戸口の織り機に娘ムーラン
不聞機杼聲  トントンカラリ織りの音 その音もなく
唯聞女歎息  ただ嘆く女のため息ばかり
問女何所思  父女に問う、何を思うや?
問女何所憶  女に問う、何か想い出すのか?
女亦無所思  娘は口重く、いえ何も・・・
女亦無所憶  娘は口重く、何を想いだしましょうや

昨夜見軍帖  昨夜、召集令状を見てしまったの
可汗大點兵  国王は多くの兵を求め
軍書十二巻  徴兵書は十二巻にも及ぶ
巻巻有爺名  その全てに老父の名見たわ
阿爺無大兒  父に替わり出征する息子なく
木蘭無長兄  ムーランに兄はいない

願爲市鞍馬  願わくば・・・私が騎馬に乗り
從此替爺征  老病父に替わり出征するわ
東市買駿馬  東の市で駿馬を買った
西市買革薦  西の市で鞍を買った
南市買轡頭  南の市でくつわを買った
北市買長鞭  北の市で長鞭も用意した

旦辭爺孃去  朝早くにそっと父姉に別れを告げる
暮宿黄河邊  暮には黄河の野原で野宿した
不聞爺孃喚女聲  父姉の娘を探す声は届かず
但聞黄河流水鳴濺濺  ただ黄河の水せんせんと泣き流る
且辭黄河去  やがて黄河を去りて先急ぐ
暮至黒山頭  暮に黒山の頂きに至る
不聞爺孃喚女聲  父姉の娘を探す声いよいよ届かず
但聞燕山胡騎鳴啾啾  燕山より匈奴の騎のいななきかぼそく聞ゆ

萬里赴戎機  遙か遠く、戦場に赴きたり
關山度苦飛  関所の山を苦労し越える
朔氣傳金木斥  北方の冷気に銅鑼ドラと拍子木が寒々響き
寒光照鐵衣  冬の月光よろいを照らし戦士闘いに明け暮れる

將軍百戰死  将軍は度重なる激戦で骸ムクロとなり果て
壯士十年歸  英勇ムーラン将軍となるや、軍兵鼓舞して幾多の戦火を勝取る
       十年して凱旋す

歸來見天子  長路都に帰り至、天子にまみゆ
天子坐明堂  天子は宮殿で兵士達を迎え
策勳十二轉  天子はムーランを讃え十二階特進の勲を与え
賞賜百千彊  百千もの褒美を賜る

可汗問所欲  天子問う「願いはないか」
木蘭不用尚書郎  ムーラン「高位は欲しくはございませぬ」
願馳千里足  「ただただ、千里の先
送兒還故郷  ふるさとへ帰らせてくださいませ」と

爺孃聞女來  父達はムーランが帰郷を聞き
出郭相扶將  手を取り合って郭の外まで出迎え
阿姉聞妹來  姉は妹が帰ることを聞き
當戸理紅粧  戸口で化粧を整う
小弟聞姉來  小さき弟は姉の帰郷聞きおよび
磨刀霍霍向猪羊  刀を手に歓声を上げ豚・羊小屋へ向かう

開我東閣門  ムーランは吾村の東門から入り
坐我西閣牀  吾家の西部屋の藁寝台に座り
脱我戰時袍  戦場での吾武具を脱ぎ
著我舊時裳  昔着ていた娘服を懐かしくまとう
當窓理雲鬢  窓辺で吾髪を櫛とぎ
對鏡帖花黄  鏡に向かっては化粧する

出門看火伴  門に出て戦友たちと顔を合わせるに
火伴皆驚忙  戦友は皆仰天し驚く
同行十二年  十二年間戦さ場で辛苦した戦友が
不知木欄是女郎  まさかムーランが女将だったとは

雄兎脚撲朔  戦は死と隣り合わせ、雄の兎は足がガクガクで前に進まず
雌兎眼迷離  雌の兎は目がチラチラと虚ろで定まりもせぬ
兩兎傍地走  どんな兎といえど地面に這いつくばるよう走るのだから
安能辨我是雄雌  どうして雄だ雌だと見分ける必要があろうや


◎木蘭詩
南北朝時代北魏(386~534)の民詩『木蘭辞』より、日本では大和時代
『楽府詩集』に木蘭詩2首が収められている。

 

    

 

 

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ムーラン(花木蘭)、生まれは412年(406年説あり)、502年に90歳で逝く。
父は花弧、姉は花木莲、弟は花雄。

 

ムーランのいるファ(花)家も男子を一人出征させなければならない。ファ家には高齢でしかも脚を患っている父弧しかいない。出征しようとする父を見るに堪えないムーランは父に替わり戦地へ赴く。

緑なす長髪をバッサリと切り、男装をして従軍するのだった。


男のふりをして北方民族軍柔然と奮戦するも、失敗したり仲間から意地悪され反撃したり、軍隊の荒くれと暮らす。
日々の努力により腕を磨いたすえ、やがて戦友たちから一目置かれてゆく。故郷の仲間も次々と戦死して、彼らの血に染まる兵票の木札を洗う悲嘆に耐えきれず、涙の日々を送る。

 

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そんな過酷な日々にムーランは司令官(ウェンタイ)への淡い恋心が芽生え一条の光となる。
しかし戦況は激化しムーランも手傷を負った所を助けられる。しかし戦功で昇進し、将軍の後任となる


大決戦で司令官は戦死絶望するも祖国のためにと戦友とともに奮戦を続ける。
ところが、傷を負っただけで、ムーランの自立を促すため司令官は目立たぬところで療養していたのだ。

 

他の友軍との戦略で、指令通りの戦闘を行うも友軍は逃げて死地に陥ってしまう。
援軍も食べ物も届かぬ中、柔然の大軍隊と対峙し全滅を覚悟しつつ突撃する悲愴なムーラン。

 

兵士たちを救うため犠牲になる決心をしたムーランをかばったのが司令官ウェンタイ。
証明の玉を見せ天子の第六皇子を名乗り、人質として自軍の身代わりとなる。

 

柔然の大軍隊は北魏の皇子を人質に意気揚々と引き上げて勝利の宴を開く。

ムーランは単独騎馬で乗り付け柔然女に成りすまして、柔然の后と密約を交わし柔然王をしとめる。

柔然の大軍隊は王がいなくなったので北方へと引き上げて戦乱は終わりを告げる。

 

柔然王を討ち取った功績で勝利を収めたムーランは、事の顛末を知った皇帝から、裏切った友軍を罰するお達しとともに、ムーランに謁見を許す。秘宝を賜り、国を救った英雄として全国民から称えられる。

天子問う「願いはないか」
ムーラン「高位は欲しくはございませぬ」
  「ただただ、千里の先
   ふるさとへ帰らせてくださいませ」と

 

彼女へ想いを寄せる司令官の皇子がはるばる訪ねてくる
皇子「ともに逃げて二人で暮らそうぞ」
ムーラン「(それは吾願い)・・・あなたは人民に平和をもたらすお役目が」と身を引き
貧しい廓に帰るムーランを見送る皇子。

 

 

北魏はこのように北方の遊牧民柔然じゅうぜんの勢力を弱めたので、西域の諸国や東北の高句麗朝貢した。
この時期、江南の開発が一挙に進み、後の隋や唐の時代、江南は中国全体の経済基盤となった。南朝では政治的な混乱とは対照的に文学や仏教が隆盛をきわめ、六朝文化と呼ばれる貴族文化が栄えて、陶淵明(365年-427年)や王羲之などが活躍した。

マルコの父は陶淵明の本を書くことのため生まれて安らかに召された。

 

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+++マルコの学び+++

・身を犠牲にして父や人民のためになろうとする潔さに感服する。


・何が一番大切かを確と心の中心に置き、襲い来る感情や目先の欲に惑わされない高潔さはいったいどこから来るのだろう。生来かもしれないが、何か修行のたまものだろう。


・勇気とあたたかな慈愛を秘めた正に英勇でありその後をたどりたい。
 吾々の仲間はこうした人材を求める。