お年寄りの仲間入り
いろいろ邪魔扱いされ、また、親切にされる
五年ほど前、施設送りとなった母上を
枕をもって訪問した時だった。
「母上、枕がほつれ申した。繕っていただけませんか」
「いいわよ!」
仕上げはマルコよりずっと巧みにしてくれ、今なお愛用している
施設は針や鋏が危険と隠してしまった。
別の時はバリカンを持って訪問
「母上の散髪、お願いしたく候」とバリカンを見せた
「ええ、いいですよぉ!」と満面の笑み
一時間近くブーブーとバリカン虎狩り
きっと疲れるだろうけど、その嬉しそうな顔は忘れることがない。
施設にとってはバリカンなんて趙危険刃はご法度
施設では一つとして役目はなく、全ての能力が眠る。
“安全”とかいう保身スローガンでほとんどを禁じられる
本人のためといいつつ、自分たちの都合最優先
年よりの悲しみは、
「自分の出番が全くないこと、
必要とされている確信がないのは人生の死なのよ」
年寄りは、介助と出番のやじろべえ。
人生は日々の過ごし甲斐から
やり甲斐、いき甲斐へと充実してゆく