千 年 の み ち

“渡り鳥” が描く今と未来               たちばなマルコ

籠められた愛のお裾分け

島田からパウンドケーキが届いた
エス級の祈りがこもった逸品

なぜだか---半世紀前の出来事が
すいと頭をよぎる

 

   

形だけ婚儀をした女は
遊びまわっていた
料理なんぞにつゆ興味なく、
知り合いと麻雀をし、
わがままに昔の男と遊び、
紹介した仕事と戯れていた

すぐ近くの親元から食いもんを運んで並べた
不様な食卓には寒風がヒューヒュー吹き

マルコはできるだけ遅く帰った

養子との結婚式をすっぽかし大慌てさせたその姉達は
顔を合わすと準備していた嫌味を云い連ねた
もちろん財産や名誉を期して

「なんと、くさい整髪料だこと」
「お金ないのよね」
「きっと夜は週一回だわ」
「私ら仲よくって毎日よ」

手に入らぬことは余程我慢ならないんだろう
美人と美男子の二人はぬけぬけと
稚拙さを漂わせた

食卓前の女は愚稚を口にしていた
「名前を変えたら社長になれるわ」
「うちの名は珍しいの」
「そっちのお父さん、金がないし部長どまりでしょ」
「名前もどこにでもあるし」
人の親や兄弟をさげすむ人々
実家での飛び交ったであろう比較の自慢会話を
そのままひけらかす

わが父上には云わなかった
雷が落ち家同士のけんかになるからね
けれどマルコは分かりつつ愚かだった

実力なく自慢する女にろくなのはいない
金と地位と名誉に胡坐かく親御さんとも
通じ合おうともしなかった。
きっと違った流儀で心を込めたのだろうか、
すれ違っただけ

一番偉そうに振舞う社長に引導を渡した
心のこもっていない処でなんの人生っぞ!
迷うことなくさらばじゃ!をした 

知人たちにはアホ呼ばわりされた
そうやなぁ、泥沼から蓮華を生やす知恵なしの
若気に翻弄された前世だった

   

 

シスターからのずっしりケーキ
温かさと慈愛の光り拡がり
千年構想種まきの苦労と苦役が軽くなる

 

このひかりは人々を温かさで包む
おなじく父上の仏壇からも光がいずる
つつしんお供えし祝おう

 

 

とあるお人が手編みのセーターをくれた。
今はいない旦那さんにとコツコツと編んだもの。

その人、この人、お世話になった多くの人々に
溢れるような愛が届きますように!

 

 

       



そうでなくてもちょっとの縁あり人にもお裾分け