渡り鳥がゆく < ユーモラスな若者達と ;ベトナム>
「それじゃ、俺が撮ってくる、マルコ」
「おおきに、フィ、気いつけなはれ」
正に学生の爽やかさを振りまくフィはプールに漕ぎ出した。
大きな池を彼らはプールといった。
わたしが初めて見る、白蓮の撮影を買って出たのだ
小舟はちいさっくて、蛙達を驚かさない程度に
そろりと進むのだった。
赤の蓮華を通り過ぎて、目当ての白蓮を目指す
色んな方向から、遠近取り混ぜて撮ってくれている。
渡したカメラは電池が切れかかっていて、扱いにくいが
さすがは技術者の卵、うまくやっている。
撮り終えて、慎重にしずしず岸辺にたどり着いた。
「お~ィ、カメラ取りに来て」といったのだろう。
女の子が橋を渡って受け取った。
次に慎重に手綱を渡して船の舳先を固定させたのだが
まずかった。舳先が上がりすぎた
フィはじゃぼんと水の中・・・・
女の子は岸辺で、マルコはコーヒー片手で笑い転げた。
すまぬ、笑ぅて
胸位まで濡らして、カメラだけ無事に戻してくれたフィは
ニコニコと不満顔など一切見せなかった。
女の子は、場を取り繕ってくれ
スマートフォンの動画を見せてくれる。
なんと、お隣さんの飼い犬が呼ばれたら、寄ってきて
合掌するではないか。 餌をもらう前にするという。
古文の時間はよく居眠りしていたけれど
柿取りの名人の話が蘇った。
柿取りを教える名人は、最初にほとんど指示せんかったが
終えて降りる間際に注意を促したという。
フィは学んだろうか?