千 年 の み ち

“渡り鳥” が描く今と未来               たちばなマルコ

カヤのざんげ


むかしむかし・・・

なにか心が落ちつくゆったりした大きな河のほとりに
かや(茅)ねずみが住んでいました。


スパニーダ国で一番チビでした。

 

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        かや原に住まいしてます へい、カヤです
       http://wonder.whdpet.com/p/1703/hDTZVEWj1.html

朝目ざめるとざわめく茅に登って体操をするのです。
遠くを見渡したカヤは身震いしてひらめくのでした。

「ほりゃ?人の家に赤いものが揺らめいてる
 あれなんやろ?」
「まるこいな、中に入ったらおもろいでぇ」
「どんな匂いやろ?」

カヤは尻尾をなびかせ
脚を最高に回転させて
たどり着きました。

「ハアハア、ぜーぜー」

しっぽを茎に絡ませるのは得意、
小さな両手でつかみ登ったら
なんとまあ景色のいいこと

    

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周りは花園で
「この花居心地よろしいわ
 この景色天国や!」と自慢がお。

     

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           蜜もしべも食うた


鼠声の高周波で呼びかけました。
「そんな茅(かや)ばっかし見とらんと、
こっちきたら色とりどり、蜜もおいしいでぇ
けしきもええでぇ」

仲間達は思いました。

「ふん、わたしら、何億年も前からここにおるんや」
「いつもでしゃばりやがって」
「あほ!ええかっこしいめ」
「変鼠ぃ!」

そのネズミはずっと茅の林に
ひっそりと暮らしていたのです。

カヤはそのとき、風に乗ってきた
匂いを感じました。

「にゃーお」
下に恐竜のような大きな毛むくじゃらが
のしのしやってくる

   

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             なんぞ ネズミの匂い!
       http://hal2009cat.blogspot.jp/2014/05/blog-post.html

 


カヤは十字を切って神様に祈り懺悔しました。

「ドキドキ、心臓に悪いなぁ
 心臓は神様の贈り物、大事にしなくてスンマセン」
「仲間を非難したことになってしもた、かんにん」
「どうかむこうに・・・」

毛むくじゃらの恐竜にくわえられて
家の主の足許にポトリと落とされました。
ギュー

仕合わせなことに、あるじは優しく手に乗せてくれました

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            あったかいなぁ
     https://matome.naver.jp/odai/2134715427186979301


あるじはスパニーダ国の祭りに着飾って出かけがてら、
カヤを庭のはしにそっと放してくれたのです。


毛むくじゃら恐竜にくわえられた毛衣はほころび
とぼとぼ元の河ふちの住まいにたどりつきました

でもその夜は、住まいに蓄えた犬麦をたらふく食べたら
すやすや眠れたのです。

 


翌朝がちゃんとやってきました。
伸びをしたカヤは葉先のつゆを飲んだ後
遠くを見渡して、こりずにひらめくのでした。   



「おはよ、あの花を河に浮かべて
大航海しょ!」
「ほりゃ?・・・近ごろきれいな水だから
彼岸にあるというシジミがうまいそうな。
採って皆にうろ」
「ひひひ もうかるでぇ」


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        向こうに見えるは


・・・・・・そうして赤い花船に乗ったまま行方がとだえたのです。

 


・・・時は劫を経て
カヤは転生してマルコとなりました。

今生は  “おっちょこちょい”  のありようを調える
精進の道をため息をつきながらも歩むのでした。


                 おしまい

 

 

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          えいや!