小菊
彼岸にて、吾が父上は愛猫メリーとともにいる。
若い頃、人生の道を選び迷った末、鈴木大拙の導きで
安寧平安の内に人生を送った。
マルコが幼い頃から、その傍で足取りを目の当たりにして、
今更ながらよき師がすぐそばについて薫陶三昧だったなぁ
としおらしく幼心になる。
目標達成型の頑張り人生ばかりなら、いずれは愕然とする。
それ以外に、こころ閑かに何もない境地に安住する
満たされた心持ちになることを教えてくれた。
一言で言うと
することのある充実と、することのない平安
の二世界を両方楽しめる、ということ。
それが、バランスよい人生だ。
学生時代に一念発起した大著を老年でまとめ上げ、
のち、母もうらやむ相棒メリー猫と安寧(安らかに落ち着いている)の
日々を過ごした父上だった。
二階の窓から世間を眺めて、子供に手を振り
「マルコ、このままいつ死んでもええな」
とにこやかに述懐していた。
秋分の日、外は嵐だけれど、好みだった
母上の密造ワインをお供えしよう。
左が母のシェリー葡萄酒