千 年 の み ち

“渡り鳥” が描く今と未来               たちばなマルコ

  南の島だより  <光の妖精>

 

www.youtube.com                          流涙真珠増光

 

 

学生期の校歌だったか
 ♪ 嗚呼!あこがれの若き児が~ ♪と
蛮声を上げて歌った記憶が蘇った。

 

人は歩みの果てに近づくと、身体のみならず
憧れという心のハリも衰えさせる。

 

加えて世間は、常識槌で頭を叩き足を引っ張るがごとく、
若者の夢や憧れを萎えさせて無難へと置き換えようとする。

 

 


南の島はいつものように光と生きものの目覚めで開ける。
マルコはいつものように浜で爽やかな風の中、スパムおにぎりを食らう。

海亀とは会えなかったけれど、八朔の種を植えながら
海辺のおしゃれな橋を渡る。
東シナ海が眺められるカンガルーポケットの休憩所もあるし
以前はシャンデリア風の街灯が輝いていたとか。

 

コロナ騒動で店が閉まっている海の駅へと向かう朝の散歩道、
限りなく広がる海に向かってテニスをしている人がいた。
軽やかなフットワークでゴム紐のついたボールをスコン!スコンと
清々しい朝にふさわしい音が響く。

 

音の主、Nさんと目があった。ニッコリして
「おはようございます!」
「朝早くからお元気で!」
二三こと言葉が行き来して、Nさんは自宅に案内してくれた。

 


その自宅は---すぐ先に係留してある麗美なクルーザーだった。

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                光の妖精号

「これは自作の風呂です」と手品のように甲板をめくって
見せてくれたのがヒータをしつらった檜風呂。
「ま~!よろしいなぁ」とマルコは洋上のチャプチャプ温泉三昧を想像した。

今までで一番美味しいコーヒーを味わいつつ話を伺った。

Nさんは二十歳代でクルーザーに乗って港から港へ旅をする夢を
確固として抱いた。
三十~四十年を経て、 目の前に実現している。

フランスから取り寄せた美しい船体、その名は
フェ・デ・ラ・ルミエール号 Fée de la Lumière
色鮮やかな三色の船帆、落ち着いたチークの内装リビング、
すやすや安眠できそうな素晴らしいダブルベッド、天井の照明、
逆さ吊りになったブランデーグラス
工夫してデッキに取り付けた風呂、
最新機器の通信設備・・・・・他にもありそうだ
その一つ一つがNさんの思い入れと工夫に満ちている。

 

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                フルートもウクレレもやるよ

 

この空間は何十年も育んだ夢を元に、
艱難辛苦を乗り越えてやりたいことも我慢し
そうした味付けで最高の居心地のよさを醸している。

マルコにはその心意気、少年の輝きを持つまなざし 、
実現した充足感、気に入ったものに囲まれた平安、
その一つ一つが胸を打って共鳴する。

Nさんはきっとこれからも最高の時間を持ち続けることだろう。


------マルコも二十代初め、世界で三箇所の拠点を持って、
季節季節渡り鳥巡りをする計画を立て始めた。


禍福は糾える縄のごとしというが、
その憧れの達成には禍ばかりつきまとった。

婚儀をした相手の両親は大慌てして親族会議を開き
目を据えて StopざDream!
アジアに第二の拠点を作って、ライフワークのためあれこれ調査したら、
兄弟はいかり疎遠となった。

 

けれどもそうした人生の陰と陽と言うのか、
浮き沈みと言うか、身勝手な良し悪しの向こうには
必ずや 光明が潜んでいる。

 

 

インドの五千年前の行者は厳かにいう
     “I think it. I image it. I act it.  I live in it.”


若者は憧れ、行動し、そして現実とした中でのびのびと充足を味う。

この箴言は眼の前のNさんのためにあった。


現に光の妖精と毎日踊って
充足の極みにいる。


これぞまほろ

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憧れの妖精が来たりて、老いに輝きを灯す

 

 

 

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